Lesson8 (Rumba)
おとぼけfessくん KB:・・・はいはいはい・・・あらフェスくん、おはよ。早いね・・・うわぁああ!フェスくん、どうしたの、その顔?真っ黒だよ! Fess:あほか、わし黒人やで。 KB:その上、頭もパンチパーマ! Fess:せやから、黒人や言うとうやろ! KB:いや、いつにもましてパンチパーマ。 Fess:あ、そうか。さっき家が焼けてもてな。その時髪も燃えたんかな。 KB:えっっっっ!!家が燃えた? Fess:うん、全焼や。悪いけど、しばらく嫁はん泊めたってくれるか? KB:う、うん、そんなのはいいけど、フェスくんこれからどうするの? Fess:さっきニューオリンズ市役所行ったら、生活保護受けれるゆうとったから、なんとかなるやろ。 KB:ピアノは? Fess:弾くがな。嫁はんも内職するゆうとったから、大丈夫やで。わしもバイトするしな。 KB:バイト?なんのバイト? Fess:これやがな。(と、指をぴらぴらする) KB:あ、やっぱりピアノ。そりゃ、フェスくんはそれが一番だ。 Fess:ちゃうちゃう。パソコンやパソコン。 KB:え!フェ、フェ、フェスくんがパソコン?! Fess:(自慢げに)パソナに登録してきた。入力作業は案外割がええ。 KB:・・・・ Fess:パソコンやタイプライターはピアノ弾いとるみたいで、楽しいな。 KB:フェスくん、タイプミス多いらしいから気をつけてね。 Fess:わしはピアノもタイプもミスせえへんで。 KB:・・・・は、はい。おっしゃる通りで・・・。 Fess:ま、そんなことはええんや。ねぇちゃん、悪いけど病院まで乗せてってくれへんか?車、持っとったよな? KB:うん、父親の車だけど。で、病院ってフェスくんどこか悪いの?火事でヤケドしたとか? Fess:いやいや、どうも今朝から頭が痛とうてな。 KB:頭痛には『Crawfish Fiesta』が効くよ。私も10数年愛用してるけど、バファリンより胃に優しいし。 頭痛にも有効な名盤『Crawfish Fiesta』 KB:はいはい。 (旧型ブルーバードでKB登場) KB:お待たせぇ〜。 ブルーバード:ごごごごごごごごごごごごごごっ・・・・・ Fess:・・・おいおい、この車、ごっつい音出しとるで。大丈夫かいな? KB:大丈夫、大丈夫。早く乗って。午前の診察に間に合わないよ。 Fess:・・・ほんまに大丈夫かいな。 (フェスくん、助手席に乗る) ブルーバード:ごごごごっ・・・ごごごごごっ・・・ごぉごぉぉぉぉぉ・・・・ Fess:おいおい、パワーアップしてきたぞ。 KB:この車、もう10年以上乗ってるからね。でも大丈夫。エアコン止めると音も止まるから。ほら。 ブルーバード:ごごごっ・・・・・・・ KB:ほらね。 Fess:おっ、ほんまや。 ブルーバード:・・・・・・・・・ Fess:・・・・・・・ ブルーバード:・・・・・・・・・ Fess:・・・・・・・おい、エンジンも止まっとるがな。 KB:・・・ありゃ・・・ど、どうしよう・・・ Fess:「どうしよう」ちゃうやろ、こんな道路のまん中で。はよ、エンジンかけ直さんかい! KB:か、かかんない・・・ Fess:おいおい、ねぇちゃん頼むで。 ブルーバード:きゅきゅきゅきゅぅぅ〜きゅきゅきゅきゅぅぅ〜・・・・ KB:あ〜〜〜、ダメだぁ〜。 Fess:どないやねん、この車!ねぇちゃん、とりあえず降りて路肩まで押すぞ。 KB:は、はい!手伝います! (ブルーバード、ふたりに押されて道路脇へ) Fess:あぁ、こんなことなら最初からチャリで行くべきやった・・・ KB:・・・・・・あれ?・・・・・フェスくん、なんか聴こえない? Fess:ん?・・・・・・なんや? (路駐の車の下から歌声が聴こえる) Fess:あの車の下からちゃうか? KB:も、もしかして・・・ リー:トウェンティワンマイルフロムタ〜ウン♪マイオールドカーブロークダ〜ウン♪〜 Fess:おっ、リー・ドーシーや!助かった!こいつ専門家やで。おいっ、出てこんかい! 可愛いリー・ドーシー リー:な、なんです?・・・あ、フェスさんだ!(にこにこ)おはようございますぅ! KB:あ、本物・・・かわいぃぃ・・・ Fess:悪いけどなぁ、あそこのオンボロ・ブルーバード直してくれへんか? リー:(にこにこ)いいですよぉ。車直すの大好きですぅ。 Fess:大好きて、それ仕事やろ。 リー:うん、仕事です。でも、大好きですよぉ。あ、でもこれエンジンのほうですねぇ。専門はボディなんですけど・・・ Fess:できんのか? リー:いえいえ、できますよぉ(にこにこ)。 Fess:ほんま、こいつは幸せなやっちゃで。機嫌悪い時あるんかい? リー:ありますよぉ、もちろん。 KB:へぇ、どんな時? リー:えーっと、足の怪我した時はやっぱりヘコみましたねぇ。 Fess:それ、いつの話や? リー:第二次世界大戦の時ですぅ。真珠湾攻撃で日本の人にやられましたぁ。 KB:・・・・・・・・ Fess:ねぇちゃん、そのことには触れんとこ。 KB:う、うん・・・・・・・ Fess:(なんか頭痛がひどなってきた・・・)リ、リーくん。く、く、車は直ったかね? リー:(にこにこ)はい、もうできますよぉ。 Fess:トゥ、トゥーサンは元気にしてるか? 金持ちトゥーサン Fess:相変わらずやな・・・あ、そうや!リーくん、君に頼みがあったんや! リー:(にこにこ)なんですかぁ? Fess:ベティちゃん、紹介してえな。 リー:(にこにこ)ベティ・ハリスですかぁ?いいですよぉ。 KB:これこれ、フェスくん。ドサクサに紛れて何を言ってるの。 ベティちゃん可愛い! KB:いや、そりゃ可愛いけどさぁ・・・ Fess:で、リーくん、まだかいな? (リーくん、にこやかに) リー:はい、直りましたよぉ! Fess:おぅ、すまんな!さ、ねぇちゃん行くで。急いで病院や!・・・・ありゃ? KB:ん?どうしたの、フェスくん? Fess:なんでか頭痛が治っとるで。 KB:へぇぇ、すごいねぇ。『Crawfish Fiesta』と同様、リーくんの癒し効果だね。 リー:(にこにこ)よかったですねぇ! Fess:ほぅ。これからはライブの翌日は、リーくんに会いにくるか! KB:ん?なんでライブの翌日なの? Fess:いやぁ、昨日のライブでピアノに頭突き入れすぎてなぁ。 KB:・・・・頭突きって・・・い、いまだにそんなことやってるとは・・・・・・ Lesson8 今回のレッスンでは、プロフェッサー・ロングヘアーのピアノスタイルを通してニューオリンズ音楽の醍醐味、リズムについて学びます。ここでは特に、フェスの最大の音楽的特徴であるラテン・リズムとのかかわりを中心に聴いていきましょう。教材はアルバム『Crawfish Fiesta』です。
今回の教材『Crawfish Fiesta』持ってない人は借金してでも買え! まず、全体を通して聴いてみましょう。 どのように感じられますか?暖かく、おおらかで、ゆったりとした気分で聴くことができましたか?それとも無意識に体が動いてしまうような、ウキウキした楽しい気持ちになれたでしょうか?感受性の強い方なら、そのスケールの大きさに音楽感が変わってしまうということもあるでしょう。 カリブ海周辺はリズムの宝庫(『パーカッションの本』ヤマハ音楽振興会より) まず、9曲目の『Cry To Me』を聴いてみて下さい。この曲は、ピアノの左手・ドラム・ベースフレーズのいずれもキューバのルンバ・ビートを基本としたノリで構成されています。この左手のルンバ・ビートはフェスのピアノの特徴として有名ですが、ここではそのフレーズではなくノリそのものがどっしりと引きずられている事に着目して下さい。 また、このアルバムを通じて特に興味深いのは、ドラムが叩くビートがセカンドラインであったりオーソドックスな8ビートであるのにも関わらず、曲全体がラテン風味になってしまうところです。8曲目の『In The Wee Wee Hours』などは、ドラムのセカンドライン・ビートにベースのラテン・フレーズがのっかり、カリビアン風味のホーン・リフが重なります。仮にフェスのピアノがなかったとしても、十分に聴かせ得る個性的な秀逸アレンジです。
12曲目の『Crawfish Fiesta』は『Rum & Coke』というタイトルでも知られ、カリプソを基本としたスタイルの曲と言われますが、西アフリカを起源とするトリニダード島の労働歌カリプソとは少し異なり、フェス独特のスイング感を持ったスタイルで演奏されています。また、ジョン・ヴィダコビッチの軽くシンコペートするドラムがディキシー的なノリを加えているところも面白く、ニューオリンズ音楽とカリビアンをうまく融合させています。
さて、ここで心に留めておいていただきたいのは、フェスの音楽は単純にそれまでの音楽にラテンのノリを加えただけではないということです。確かにフェスの左手はルンバ・ビートが多用されますが、そこだけにとどまらぬ左右の個性的な絡みやバンドとの兼ね合いから音楽的な懐の深さが感じられるはずです。それに加えてフェス以前の多くのブルース・ピアニストがアフロ・キューバンやボンバ、ソン等を彷佛させるパーカッシヴなラテン・ベースを聴かせることから、ラテン音楽の導入がフェス特有の個性とは言い切れません。
『ブギウギ』+『ルンバ』=『フェスの音楽』という単純な図式は、決して成り立ちません。
さて、本文に登場するリー・ドーシーですが、『Ya Ya』『Ride Your Pony』『Working In The Coal Mine』等、数々のヒット曲を持つニューオリンズを代表する人気者R&Bシンガーで、ミーターズの演奏を従えたアラン・トゥーサンプロデュースのもと、ニューオリンズ・ファンクの顔ともいうべき存在となりました。歌いながら自動車修理の仕事をしていた時に、車の下から引っぱりだされてスカウトされたというホノボノとしたエピソードも残っています。Reference Dataのコーナーで作品を紹介しておりますので、興味をお持ちの方は参考にしてみて下さい。 また、本文にあるように、フェスの自宅は実際に全焼してしまい生活保護を受けて生活していた時期がありました。ピアノを弾くのに似ているという理由でタイプライターを好み、レコードショップで働いていた時はミスタイプだらけの曲目カードを作っていたそうです。さらに、若い頃のライブではピアノに頭突きを入れながら演奏し、アップライト・ピアノの足元を蹴り破ったりと、想像を絶する演奏をしていたようです。 |