Lesson7 (Idea)
お詫びと訂正(2002.9/15)
KB:こんにちは。本日はコジモ・マッタサの音楽スタジオから、フェスくんのリハーサルの模様をお伝えします。
ドラマー軍団:フェスさん、おはよーございます! Fess:うん、おはよーさん。みんな、お揃いやね。 ドラマー軍団:はい! Fess:今度、横ジマのTシャツ用意しといたるから、服もお揃いにするんやで。 ドラマー軍団:・・・ Fess:短パンに革靴な。 ドラマー軍団:・・・は、はい・・・
KB:・・・だ、大丈夫でしょうか・・・スタジオ内に不穏な空気が・・・
Fess:シバ、お前はプロペデラーが弱すぎるで。 Shiba:はっ? (ドラマー軍団、さーっと円陣を組む) Shiba:(こそこそと)フェスさん、何ゆうてはりますの? Charles:なんやろな? John:これ、僕わかるで。前に言われたことある。多分、バスドラのフット・ペダルのことゆうとんや。 ドラマー軍団:ほぉぉぉぉ! (ドラマー軍団、円陣解散して一列に) Shiba:はい!これからは、強く踏みます! Fess:いや、強よぉ踏みゃあエエっちゅうもんでもないからな。ジグのプロペラクター聴きゃ分かるやろけど、グルーヴをプロペルせにゃ・・・ (ドラマー軍団、再び円陣を組む) Shiba:(こそこそと)プロペラクターっちゅうのは何です? Al:これもやっぱり、フットペダルのことちゃうか? Earl:おそらく、そうやろ。このくらいのマイナーチェンジなら、分かりやすいな。 (ドラマー軍団、円陣解散) Shiba:分かりました!これからは、プロペラクターをプロペルします! Fess:(フェスくん、大喜び)そうやそうや!ペネロペ・クルスをペロペロやで!それから、ジグ。お前はあれや、シャンブルをクラッシュしすぎや。 Zigaboo:はっ? Fess:ゴーヤチャンプルーをクッキングせえへんと、クラッシャー・バンバンビガロやで。 (ドラマー軍団、再び円陣) Zigaboo:(こそこそと)またエライことゆうてますよ。 Smokey:どんどんエスカレートしてきたな。 Al:バンバンビガロって、プロレスラーちゃうの? Earl:話の流れからしたら、おそらくシャンブルとチャンプルーはシンバルのことちゃうか? ドラマー軍団:ほぉぉぉ! (ドラマー軍団、円陣解散) Zigaboo:はい!チャック・ウィルソンをチャグチャグ馬っ子して、クラッシャー・バンバンビガロです! Fess:ジグ、そんなボケいらんで。 ドラマー軍団:・・・はい・・・・・・・・・ Lesson7 これまでは、プロフェッサー・ロングヘアーの音楽を実際に聴くことによって学んできましたが、今回のレッスンでは前回までのレッスンを踏まえて考える作業により、音楽の理解を深めていきましょう。 さて、fess!fess!fest!レッスンのプロローグの中で『プロフェッサー・ロングヘアーの音楽は黒人音楽の神髄を理解するには恰好の素材』とあります。 ニューオリンズ内のみでなく、全世界的に優れた黒人ミュージシャンは大勢いるにもかかわらず、フェスがここまで圧倒的な存在感を示すのはいったい何故なのでしょうか(一部のブル−ス・ファンの間では、ニューオリンズ音楽を軽視する人もいるという話も聞きますが・・・)。 その理由のひとつに、フェスが音楽ひとすじのミュージシャンでなかったことが深く関係していると思われます。 どんな音楽にも、『神』『王』などと呼ばれる偉大なミュージシャン(例えば、シカゴブルース界のマディやハウリン・ウルフ、ファンク界のJB、ソウル界のサム・クックやオーティス、レゲエ界のボブ・マーリーといったような人々)が存在します。そういった人たちであっても、1枚(または1曲)くらいは『なぜこんなものを録音してしまったのだろう?』と思えるようなアルバム(または曲)がないでしょうか。それは、演奏の出来が良いとか悪いとかということではなく、それまでのスタイルとは違って妙にポップだったり、やけに大仰しかったり、その時代に流行しているサウンドやジャンルに影響された作品のことを指します。 不思議なことに、フェスにはそういった録音がひとつもありません。ニューオリンズにも大勢いる所謂『一発屋』には多い傾向ですが、フェスのような後々まで多大な影響を及ぼすミュージシャンには極めて稀なことです。 レコーディングにあたっては、プロデューサーからの要望で本人の望まないスタイルや曲を強要されることもあるでしょう。例えば、アトランティックのジェリー・ウィクスラーに『フェスさん、ストーンズのサティスファクション演ってください』と言われたらフェスはどうしたでしょうか。ブルース・イグロアに『フェスさん、今度のアルバムはオシャレなジャズ・アルバムにしましょう』と言われたら、フェスは引き受けたでしょうか。おそらくフェスは、このような間違った感覚を持つ人が周りにいないラッキーな人であったか、自分の望まないことは決して演らないワガママな人であったかのどちらかでしょう。
名著『ブルースに焦がれて』 フェス以外のニューオリンズピアニスト(ジェイムズ・ブッカー、ヒューイ・スミス、アラン・トゥーサン、Dr.ジョン、エディ・ボー、アート・ネビル等々、挙げていけばきりがありませんが)はいずれもスタジオ・ミュージシャンとして数々のレコーディングに参加したり、バックバンドとしてライブ活動しています。様々なスタイルを使いこなす、器用なミュージシャンです。さて、フェスが誰かのバックで演奏しているのを聴いたことがありますか?誰かのアルバムで、『参加ミュージシャン:Professor Longhair』とクレジットされているのを見た事があるでしょうか? きっとフェスは、音楽を金を稼ぐ手段と考えてはいなかったのでしょう。そう考えると、フェスは究極のアマチュア・ミュージシャンだったのではないでしょうか。 のびのびと演りたいことを演りたいように、心から自分の音楽を楽しむ。フェスの音楽には、このような野生のままのナチュラルな魅力がつまっています。Dr.ジョンが『フェスは、自分の音楽がどれだけ個性的であるか認識していなかった』と言っていますが、おそらくその通りでしょう。だからこそ、このような素晴らしい音楽を残すことができたのでしょうし、音楽に固執することがなかったせいで、演りたくないことは演らなくてすんだのです。 では、ここでもう一度フェスの音楽的魅力の理由をまとめておきましょう。
1、フェスは、音楽をお金を稼ぐ手段と考えていなかったため、様々なスタイルで演奏する技術を必要としなかった。
現在ニューオリンズでは、偉大なフェスの音楽に敬意を表して、フェスのピアノスタイルを次世代に継承していこうという動きがあると聞きます。大切なのは、フェスの演奏スタイルを継承することではなく、フェスのように独創的なスタイルを築き上げることです。今後、フェスのようなミュージシャンが生まれるとすれば、プライド高いアマチュアミュージシャンの中からではないかと思います。 さて、本文では8人のドラマーが登場していますが、彼等はいづれもフェスのレコーディングに参加した経験の有るニューオリンズのドラマーです。(ReferenceDataのコーナーでジガブーのソロとアールパーマーの作品集を紹介していますので、興味をお持ちの方は参考にしてみてください) Dr.ジョン著『フードゥームーンの下で』によると、フェスはバンジョー8本とチューバ2本にトロンボーンも加えた長々と続くインプロビゼーションのアイデアを温めていたそうです。その中でも特に興味深いのは、スネア・ドラムの代わりに8本のバンジョーでシンコペーションのついたリズムを演奏されるというアイデアです。確かに、バンジョーのボディにはスネアの皮が張ってあるので、弦をはじけばスネアを叩く音も出すことができますが、なぜ8本も必要だったのでしょうか?結局は録音されることなく終わってしまいましたが、少し想像してみただけでも、とてつもなく個性的で面白い曲になったであろうと思われます。 想像してみて下さい・・・8本のバンジョーが絡み合いながらセカンドラインをたたき出し、2本のチューバがベ−ス音を強調する。時には象の泣き声のようなファンキーな音でソロを取り、フェスの力強くグルーヴィーなピアノが絡む・・・どうでしょう?フェスのピアノは一般に認識されているニューオリンズスタイルとは一線を課すものですが、ここではディキシー的なアプローチが感じられ、フェスのルーツに所謂ニュ−オリンズ的なものが確かに存在していることを認識させられます。 また、本文にあるように、フェスはフットペダルを毎回違う呼び方をしたり、独特な表現で奏法を示したりしていたようです。こんなところにも、フェスの奇妙で愉快な人間的魅力を感じ取ることができます。 |
I'm So Sorry!! お詫びと訂正(2002.9/15) 上記のレッスンにおいて、『プロフェッサー・ロングヘアーは誰かのバックで演奏したり、他人のレコーディングに参加したことはない』という意味のことを書きましたが、先日入手したBo Dollis & The Wild Magnoliasのアルバム『30 years .. And Still Wild!』に1曲、ピアノで参加しているのを発見しました。 半信半疑で聴いてみたところ、それは間違いなくフェス本人が演奏するピアノの音でした。 誤った内容をお伝えしたことを心からお詫びし、訂正いたします。 しかしながら、終始バッキングに徹し、一切のソロをとることもなくワングルーヴで押し通す演奏に、あらためてフェスの一途なプライドを感じさせられ、上記レッスンの『フェスの音楽的魅力の理由』は間違っていなかったと確信いたしました。 この曲が録音された72年といえば、フェスがクイント・デイヴィスのプロデュースでアルバム『Houseparty New Orleans Style』『Mardi Gras In Baton Rouge』の音源となるメンフィス・セッションを行った年であり、当時ウィリー・ティーとともにワイルド・マグノリアスのレコーディングに係わっていたクイント・デイヴィスの手によって録音されたものと思われます。 この音が残っているということは、他にもディスコグラフィーに載っていない音源が残っている可能性は十分にあると考えられます。もし御存じの方がおられましたら、是非御一報いただけるようお願い申し上げます。 なお、1レッスンにつきアルバム2枚としていた参考資料に、今回特別にこのアルバムを付け加えることといたしましたので、興味をお持ちの方は是非御覧下さい。Refernce Data |