参考音源レッスン4
Gumbo /Dr.John(ATCO AMCY-233)
1.Iko Iko 2.Blow Wind Blow 3.Big Chief 4.Somebody Changed The Lock 5.Mess Around 6.Let The Good Times Roll 7.Junko Partner 8.Stack-A-Lee 9.Tipitina 10.Those Lonely Lonely Night 11.Huey Smith Medley:a.High Blood Pressure/b.Don't You Just Know It/c.Well I'll Be John Brown 12.Little Liza Jane
72年録音のニューオリンズ音楽カバー・アルバム。Dr.ジョンは、このアルバムでニューオリンズのルーツ音楽を一般に広める功績を残した。
1曲目の「アイコ・アイコ」はジェイムズ・シュガーボーイ・クロフォードの「ジャコモ」で知られるマルディグラ・ソング。オリジナルは陽気なマンボ・ビートだが、ここではロ−ルを効かせたセカンドライン。後に半身不髄となり音楽活動を休止していたシュガーボーイだが、彼の孫のピアニスト、ダヴェル・クロフォードのアルバムで共演を果たし、円熟した歌を聴かせている。
2、11、12のオリジナルはヒューイ・スミス。2曲目の「ブロウ・ウィンド・ブロウ」はレッスン3の参考資料であるアルバム『Pop-Eye』にも収録されているジュニア・ゴードン(録音名義はスパイダースだが、もちろんバンドはヒューイ・スミス率いるクラウンズ)で、Dr.ジョンもヒューイ・スタイルのピアノを演奏している。この手のピアノは聴ける。
11はあまりにも薄っぺら〜いバンドに悲しくなるが、曲が良いのとノリが大きいので、こっちもなんとか聴ける。12は良い。
3曲目の「ビッグチーフ」はいわずと知れたフェスの名曲で、ここでのロニー・バロンのオルガンはなかなか。詳しくはレッスン4で。
「サムバディ・チェンジ・ザ・ロック」はディキシーランドスタイルのDr.ジョン・オリジナル曲。
5曲目の「メス・アラウンド」はアトランティク時代レイ・チャールズの爽快なナンバーで、ピアノは完全にカウカウ・ダヴェンポートのカウカウ・ブルースを模したレイ・チャールズそのまま。
6曲目の「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」と10曲目の「ゾーズ・ロンリー・ロンリー・ナイト」は奇才ギタリスト、アール・キングのヒット曲。(「レット・ザ・グッド・タイムス・ロール」はオリジナル・タイトルは「カモン」。シャーリー&リーのヒット曲とは別曲。ジミヘンも演ってるんですか?)6曲目ではDr.ジョンがギターを弾いているらしいが、これが全く面白みがない。フェスのバックでは、いいギター弾いてるのになぁ。10曲目のピアノもヒューイ・スミスのパチもんといった感じ。
7の「ジャンコ・パートナー」はジェイムス・ウェインのヒットで知られるニューオリンズ・スタンダードで、これはかなりいい。いかにもニューオリンズらしいロールがきいたセカンドライン・リズムで、Dr.ジョンの歌もこれにはハマっている。
8曲目の「スタッカリー」も同様ニューオリンズ・スタンダードで、アーチボールド・スタイルのピアノ。いかにも古き良き時代のニューオリンズって感じだが、郷愁をそそるのみ。9の「ティピティーナ」についてはレッスン4で。
取急ぎ各曲についてざっと言及してきたが、Dr.ジョン自身の音楽性に触れられるアルバムという印象は全くなく、徹底してニューオリンズ・ルーツにこだわる姿勢(Dr.ジョンのというよりジェリー・ウェイクスラーとハロルド・バティステのかな?)が顕著に表れている。それなのに、なぜこのアルバムはいまだに長く聴き続けられるのだろう?曲がいいからかなぁ?Dr.ジョンの愛の力かなぁ?
ちなみに、92年には更にもう一度ニューオリンズ・ルーツに立ち返るアルバム『Goin' Back To New Orleans』を発表しているが、若干、策略的意図を感じるのは私だけだろうか?嫌いじゃないけど。65年のアルバム『Zu Zu Man』(A&M)でも、フェスの「イン・ザ・ナイト」「ボールド・ヘッド」「ティピティーナ(こっちはバンド付き演奏)」を録音しているが、こっちは更にひどい。P-Vineの『ドクタージョンの世界』(PCD-2820)は、この『Gumbo』のオリジナル曲を集めたもので、こちらはお薦め。
In The Right Place /Dr.John(ATCO AMCY-234)
1.Right Place Wrong Time 2.Same Old Same Old 3.Just The Same 4.Qualified 5.Traveling Mood 6.Peace Brother Peace 7.Life 8.Such A Night 9.Shoo Fly Marches On 10.I Been Hoodoo 11.Cold Cold Cold  
73年のアラン・トゥーサン、プロデュース作品。こっちはいい。
さすがはトゥーサン、名アレンジ揃い。その上、バックがミーターズなのだ!リズム隊は完璧。このアルバムに限らず、トゥーサンに統率されたジガブーとジョージ・ポーターの演奏は、ミーターズ初期の奔放な推進力は無いまでも文句なく素晴らしい。
7曲目「ライフ」のドラム・ベースなんて、ああ・・・。というわけで、Dr.ジョンなんてもうどうでもいいのだ。ジガブー・LOVEなのだ!
Dr.ジョンは歌に問題ありとよく聞くが、上手い下手は別として説得力がないのは確か。でも、このアルバムのような曲なら大丈夫(大丈夫って表現も失礼か)だと思う。ファンの方、ごめんね。