8、続!ニューオリンズ・ツアーガイド(3日目)
さて、ニューオリンズ旅行3日目。
敦子さんは、今回の旅の大きな目的地であるロウワー・ナインスワードに足を運びます。
ハリケーン・カトリーナで壊滅的な被害を受けた地域です。
こちらのサイト、ロウワー・ナインスワードのトラベルガイドを事前に見て参考にされたそうです。
では、あたしも少しロウワーナインスのお勉強を・・・と思いましたが、あらら英文サイトだわん。
で、翻訳サイトにかけてみたところ、いきなりFats Dominoが「脂肪ドミノ」と訳されていて、冒頭から脱力してしまいました!
「4日(火曜)
この日はいよいよ今回の旅の目的の一つ、ロウワー・ナインス・ワードに。
行く前からずっと考えていたのは「現地の人たちは私たちのようなのが来るのをどう思っているのか」という事でした。
「見にくるべきだ」と思う人もいるだろうし「もう物見遊山に来られるのはうんざり、そっとしておいて」と思う人もいるだろう。
そういう事を考えて、住んでいる人たちに失礼にならないようにするという事を常に心がけました。」
photo by Atsuko Taniguchi
「ロウワー・ナインス・ワードはフレンチ・クォーターからは東側、インダストリアル・キャナル(運河)を渡ったところです。
私たちはまず運河の Claiborne Ave にかかる橋を渡ってロウワー・ナインスに入りました。
この橋から北にある堤防がカトリーナ後に決壊した堤防で、一番被害にあった場所が良く見える橋です。
まず、その橋の真下に行って車を停め、堤防に登って様子を見てみました。
」
photo by Atsuko Taniguchi
「運河の中から堤防を見る」
photo by Atsuko Taniguchi
「堤防を真横から見る」
photo by Atsuko Taniguchi
これか〜・・・
写真で見ると、意外と高くてしっかりした堤防に見えますね・・・
「↓ Jourdan Avenue 南側より、北を望む。」
photo by Atsuko Taniguchi
「決壊した堤防に沿って走っている Jourdan Avenue ですが、一番被害が酷かったこの通り、橋に近い南側の住居の復興は思っていたより進んでいて、ブラッド・ピットのプロジェクト(*)のモダンな家も沢山ありました。
現在建設中の家も何件かあります。
が、北に向かうにつれ家がなくなり、背の高い雑草に覆われた空き地ばかりになってきます。
*Make It Right Foundation / ブラッド・ピットが2070年に立ち上げ、ロウワー・ナインスに建築家たちが(日本人含む)デザインした、丈夫で環境に優しい家を低価格で建てるというプロジェクト。」
へーーー、ブラッド・ピッドってそういう活動もされてるんですね。全然知らなかったです。
確かに、右手の方に新しそうな建物が建っているのが見えます。
場所は、だいたいこの辺りかと思います。
「 Jourdan Avenue 北側、左の茶色い建物の向こうは Florida Avenue」
photo by Atsuko Taniguchi
「ロウワー・ナインスの北限、Florida Avenue にかかる橋がちょうど上がっていったので、降りてくるまで見た後、橋の真ん中まで歩いてみました。
(インダストリアル・キャナルにかかっている橋は、大型船の通行の為に昇開橋になっています)
」
「橋が上がっていく所」
photo by Atsuko Taniguchi
(ここから、間違い探しのように少しずつ上がっていく橋の連続写真が送られてきましたが、ほぼ同じ写真なので割愛させていただきます!笑)
「インダストリアル・キャナルはポンチャートレイン湖とミシシッピー河を繋いでいる運河なのですが、普段でもやっぱり運河の水位は周りの土地より高く、その上ミシシッピー河の方が水位が高い(運河に水門がある)のがわかりました。
かなり幅の広い運河で、この水位が上がって堤防が決壊したら、どんな惨事になるかは容易に想像できました。」
地図の上部にある海のようにおっきい湖がポンチャートレイン湖、下部のくにゃっと曲がってるのがミシシッピー河です。
インダストリアル運河よりもミシシッピーの方が水位が高い・・・
なるほど、そうなると更に水位が上がれば水が流れる方向は必然的に周りの土地になりますね。
「↓橋の真ん中からインダストリアル・キャナルを見る、左側がロウワー・ナインス、奥に見えているのが来る時に渡ってきた Claiborne Avenueにかかっている橋」
photo by Atsuko Taniguchi
「東西に走っているFlorida Avenue が Caffin Avenue と交差する北側に小さい公園みたいなのがあり、堤防に階段があったので上がってみると、その向こうには大きな湖が広がっていました。
ちょっとしたデッキ作ってがあって、説明書きがありました。
この湖(地図ではキャナルとなっています)はもともと、サイプレスの木が立ち並ぶスワンプだったと。
ちょうどやって来たローカルの60代と思われる黒人のおじさんが「この湖はなあ、1965年のハリケーンの前はサイプレスの生い茂るスワンプやったんや、それがな、ハリケーンで海の塩水が入り込んで、サイプレスみーーーんな枯れてもうた、わしが小さい時はあの辺(湖の向こう岸)まで行ってな、狩りしたり釣りしたりしたもんや」などど、色々昔の話を聞かせてくれました。
この湖は現在、サイプレスの植樹が行われ、元の形に戻そうとしているらしいです、相当な年月がかかると思うけど。
*帰ってきてから調べてみると、ロウワー・ナインスの北側も、もともとスワンプだったようで、最初に開発されたのはプランテーション付きのサトウキビ畑だったらしい。」
photo by Atsuko Taniguchi
元は、この写真みたいなところだったんだ!
なんて、幻想的なスワンプ風景!
「あちこちに植樹された(?)サイプレス、枯れてるようにしか見えない(汗)。」
photo by Atsuko Taniguchi
この、ちっちゃいサイプレスがあの写真みたいになるのって、一体どこくらいの期間かかるんだろう・・・
「Caffin Avenue をそこから少し南下したところにあるLower 9th Ward Market / Galvez Goodies (2036 Caffin Ave @ Galvez ) は、去年の夏、つまりカトリーナから9年目にしてやっとできた、そして未だにロウワー・ナインス唯一のグロッサーリー・ストアで、隣に散髪屋さんが併設されています。
本当に小さいお店ですけど、石鹸やトイレットペーパー、文房具などの日用品、冷蔵庫はないので(食品用冷蔵庫はありませんが、飲み物を冷やす冷蔵庫はあったようです)缶詰、瓶詰やちょっとした果物、野菜など日常に必要な物が置いてあります。
私たちはここで買い物しようと決めていたので、キッチンペーパーやお水、石鹸など旅行で要るものを色々買いましたが、とても安かったです。」
photo by Atsuko Taniguchi
「外のキャンディの絵が描いてある横にある小さい窓では、スノーボール(かき氷)やスナックが買えます。
グロッサリーの中でお金を払って、メモをもらって窓のところに行くと、おっとりした喋り方の、可愛らしい黒人のおばあちゃん(多分オーナーか奥さんのお母さん)が作ってくれます。
私がメモをどこに貼ればいいのかわからないでいると、窓が開いて「あらあら、あなたがそこに居るのわからなかったわ、ごめんなさいねー」と言ってスノーボールを作ってくれました。」
photo by Atsuko Taniguchi
可愛いらしいお店!
「ロウワー・ナインス出身でこのお店のオーナー Burnell Cotlon さんは、洪水後修復されていなかった建物を買い取り、自力で修理改装してお店をオープンしたそうです。
とてもお話が好きな人で、元々住んでいた住民たちが戻ってこられるように生活に必要なグロッサリー・ストアをオープンした、このお店ももっと拡張したい、と将来の抱負を話してくれました。
この地区はは労働階階級の黒人地区、低所得の人も多いのでやはりドラッグや犯罪の問題が数多くあったのは事実ですけど、 Burnell さんのような地元に誇りを持ったポジティヴな人が頑張っているのを見られて、行って良かったと思いました。
ロウワー・ナインスにお越しの際は、是非是非このグロッサリーストアに足を運んで日用品を買うか、可愛いおばあちゃんにスナックを作ってもらってください。」
photo by Atsuko Taniguchi
バーネルさん、素晴らしい志ですね!
そりゃ、戻って来て住もうにも、スーパーの1軒もなければ不便で生活できないですものね。
「お店の中に飾ってある写真、この建物を買い取って修理改装されました。」
photo by Atsuko Taniguchi
わ!もともと、こんな建物だったんだ!
この状態じゃ内部も相当荒れていただろうし、バーネルさんのご苦労が偲ばれますね。
バーネルさんは今、お店の冷蔵庫やレジの設備の為の寄付を募っておられます。
頑張ってほしい!
こちらから寄付できますよ〜
https://www.gofundme.com/lower9thward
「現在の様子、散髪屋さん、駄菓子屋スタンド、グロッサリー。」
photo by Atsuko Taniguchi
「グロッサリー・ストアからもう少し南下した所にあるファッツ・ドミノのお家 Fats Domino House (1208 Caffin Ave ) は、昔から知る人ぞ知る名所でした。」
photo by Atsuko Taniguchi
こ、これ、家なんですか?!
ドアや柵の装飾も可愛い!!
入り口のところの「F、A、T、S」っていうのを見ると、思わず「脂肪ドミノ」を思い出してしまいました。
「し、ぼ、う」
うふふ!
「カトリーナの時はファッツさん、避難せずにこのお家で頑張ってたそうで、行方がわからなかったからか「ファッツが死んだ!」というニュースが流れたらしいですが、その後無事に救助されました。」
もし亡くなってたら、まさしく「しぼうドミノ」になるところでしたね!\(^O^)/
よかった!
「16年くらい前に写真を見た事あるんですが、その頃はもっと派手だったような気がします。」
こ、これより派手だったのか・・・
「ここにもまだある、FEMAの×マークのついたお家」
photo by Atsuko Taniguchi
×マークの横に、「GAS OFF」って書いてますね。
「その後に行ったのは Lower 9th Ward Living Museum ( 1235 Deslonde St )、普通のお家を改装した、ロウワー・ナインス・ワードに関するミュージアム。
カトリーナだけでなく、それ以前のハリケーンによる被害の様子や、地域の歴史、地域出身の有名人などがパネルで展示してあります。
カトリーナの前の大きなハリケーン Betsy (1965年、先に湖の所でおじさんが話してたのです)の時の洪水の時の写真も色々ありました。
この地区出身の有名人といえば、お家を見に行ったファッツ・ドミノでしょうが、日曜に見たカーミット・ラフィンズもこの地区出身だとか。
マルディ・グラ・インディアンのトライブもいくつかあったかな。」
photo by Atsuko Taniguchi
「一番奥の部屋がカトリーナで被害にあった人たちの展示だったのですが、元の形がわからないくらいになった家の写真やら、命からがら流されていくお家の屋根に登ったのはいいけど、孫娘が流されていくのに何もできなかった男性の話などを読んでいると、涙が出てきて困りました。(ちゃんとティッシュの箱が置いてあった)
このミュージアムは無料、ロウワー・ナインスを訪れる事があれば是非寄ってみてください。
ここはまた、地域の人の集会場にもなっているそうです。
帰りにいくらでもいいので、寄付もしてくださいね。」
場所はこちらです。
ストリートビューでも見られます〜
ぐるりと周囲の様子を見てみると、車が止まってたり、修復して生活しているっぽい建物もチラホラ見えますね。
「ロウワー・ナインス・ワードはカトリーナの惨事の後、次の年(2006年)の10月まで上水道が通らなかったそうです。
その後10年経った今でも、復興にはまだまだ程遠い、というのが私たちの印象でした。
元々、かなりの数の(ライブハウスとも呼べないような)バーがあって、ロウワー・ナインスでしか演奏しないようなミュージシャンが演っていたそうですが、そんな場所が復活するかどうか、するとしても相当先の話になりそう。
多くの犠牲者も出たし、家族をなくしたりしたら、帰って来るのが辛い人もたくさんいるだろうなとも思います。
ずっと気になっていたけど、10年目にしてやっと、呼ばれて行ってきたような気がしました。
行って良かったです。」
(2015年現在)10年も経ったというのに、まだまだ復興の道は険しそうですね。
ニューオリンズ音楽を愛する人にとって、とても魅力的で大切な場所です。
完全に元通りにはならなくても、少しでも多くの人がこの地で元の生活を送れるようになればと思います。
さて、敦子さんのレポートはまだまだ続きますよ〜♪
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